レストラン 毎回ワインにまつわる甘く、神秘的な歴史やストーリーをご紹介します
エピソード1
第1回目は(スウィート)に因んで甘口ワインのお話。
高級ワインというと一般的に赤ワインのイメージが強いですが、甘口ワインも何十年も
熟成する高級品が星の数ほど存在します。
特に希少価値の高いのが貴腐ワインで、特別な自然状況でしか育たない貴腐葡萄で造ります。
フランスのソーテルヌ、ドイツのトロッケンベーレンアウスレーゼ、ハンガリーのトカイ・アスー・エッセンシアが
世界三大貴腐葡萄産地として知られています。
今昔、世界最高の甘口ワインとして評価されているワインがソーテルヌ地方の<シャトー・ディケム>。
数万円もするこのワインは不作の年はワインを造らず、良年のみ1粒1粒人の手で貴腐菌の付いた完熟葡萄を選別し収穫します。
したがって、葡萄1本の木からグラス1杯分しか造られない贅沢品。まさに至高の1杯と言えるでしょう。
最後に<シャトー・ディケム>が生まれた偶然の素敵なエピソードを紹介します。
19世紀、当主であったリュル・サリュース伯爵がロシアへ赴く際、使用人たちに自分が戻るまで
葡萄を収穫してはならないと命じていました。しかし帰国が大幅に遅れて、伯爵が畑に戻ったときには葡萄が
灰色のカビに覆われていました。仕方なくそのまま葡萄を醸造し樽で熟成させました。
10年後思い出したように樽のワインを試したところ、今まで嗅いだ事のない芳醇で美しいワインが出来上がっていた。
世界中を魅了する<シャトー・ディケム>は使用人たちの伯爵に対する忠義・敬愛から生まれたと言えるでしょう・・・
ソムリエ 庄司
update : 2011.09.8 |category : レストラン