INFO 箱根へのオマージュ<<食材STORY>>
アルベルゴバンブーシェフ・山本浩靖が修業した場は、イタリア・トスカーナ州シエナ。海外での修行経験が、日本の食材を見つめ直すきっかけとなりました。現在、箱根ならではの美しく、心に残るイタリア料理の提案に挑戦し続けています。特別コースでは、山本シェフが巡り合った、ぜひ召し上がっていただきたい必食の地元食材が登場。そのストーリーをご紹介します!
【イタリア野菜・ハーブ】 Taniguchi Farm 谷口正敏さん
熱海市・伊豆山、七尾地区の高台にあるTaniguchi Farm。谷口正敏さんが育てるイタリア野菜、ハーブは欠かせない食材の一つです。
このファームの始まりはさかのぼること30年ほど前。熱海に移って小説家を目指しながら晴耕雨読の生活を思い描いていた谷口さんが、とあるイタリア料理の名店のシェフにもらったルッコラの種がきっかけ。まだまだ西洋野菜が珍しかった当時、イタリア語の辞書を片手に独学でルッコラを育てたのがその始まりだそうです。
西洋野菜のパイオニアが作る野菜とハーブ 香り強く、味が濃い
以来、西洋野菜のパイオニアとして数々の野菜を育て、現在の農地には季節ごとに数々の野菜やハーブが育ちます。露地栽培は天候の影響を受けやすく管理が大変だそうですが、野菜やハーブの味の濃さは格別です。この土地の寒暖の差が美味しさの秘訣だとか。
夏の陽射しを浴びた野菜やハーブは、緑が一層濃く鮮やか。噛めば牡蠣の味が口に広がるオイスターリーフ、みずみずしく甘みに富んだミニフルーツカラーピーマン、レモンのさわやかな香りがするベルベーヌを味見させてもらいました。
訪問したときは、“イタリアのおかひじき”と評される、しゃきしゃきした食感が特長のアグレッティや、ラディッキオ、プルピエなど、珍しいイタリア野菜、西洋野菜に出合えました。どのように食べれば良いかなど、調理の仕方を谷口さんに伺えるのもこのファームの魅力です。
【原木シイタケ】 修善寺で原木シイタケを生産 鈴木昌弥さん
温かく、降雨量が多い伊豆は、シイタケ栽培に適した地。江戸時代、この地の石渡清助がシイタケ栽培を行った記録があるなど、高品質なシイタケ栽培に歴史がある地でもあります。
鈴木さんが手がける原木シイタケ栽培に用いられるのは広葉樹だそうで、なかでもクヌギ、コナラ、シデ、ヤマザクラなどが使われています。今回お邪魔したときは、ヤマザクラが原木として使われていました。菌を埋め込み1年はそのまま原木を寝かせることで菌が木のなかを十分回り、2年目よりシイタケが収穫できます。
春夏秋冬で楽しめる、歯ごたえ、味自慢の原木シイタケ
寒いときは、シイタケはゆっくり成長するので実が詰まった香り高く肉厚なものになりやすく、暖かく、湿気のあるときは、平たく仕上がるそうです。
「原木栽培のシイタケは、香りがよく、歯ごたえがしっかりしているのが特長です。夏から秋にかけてのシイタケは冬場に比べると、平たく育ち、香りも若干劣るかもしれません。ですが、厚みがない分、味馴染みが良いため調理向きで、ソテーやバーベキューにしてバターやしょう油などで味付けすれば最高です。冬はゆっくり成長するので、身が厚く、味も濃く仕上がります。出汁が良く出るので、鍋や煮物に最適です。冬のシイタケはあわびのような食感があるんですよ」
【天城軍鶏】 堀江養鶏 堀江利彰さん
日本農林規格によると地鶏と呼ぶにはその種類だけでなく飼育方法にも規格があり、28日齢以降は平飼い、1平方メートル当たり10羽以下で孵化から80日間以上飼育とされています。山々の自然が美しい伊豆・天城、狩野川沿いにある堀江養鶏。ここで育てる天城軍鶏(あまぎしゃも)は、地鶏の基準からみてもそのこだわりが伝わってきます。
天城の恵みが生んだ、こだわりの軍鶏 味、肉質ともに逸品
狩野川から新鮮な空気が絶えず流れ込む、天城軍鶏の鶏舎。鶏になるべくストレスを与えないよう、飼育される天城軍鶏は1坪に10羽程度。規格の2.5~3倍のスペースを確保しています。肉に十分旨みをのせるため、110~140日かけて飼育したのちに出荷されます。
天城軍鶏の魅力のひとつが地域に根差したその生育方法。地元のおがくずが敷き詰められた鶏舎で、地元の米、米ぬか、たっぷりの豆乳、そして名産のワサビの葉茎など、地元ならではの餌を食べて育ち、その鶏糞は地元の農作物に使われています。
こだわりの生育方法で育てられた天城軍鶏は、ジューシーでしっかりとした弾力のある肉質とバランスのよい旨みで、多くの料理人をファンにもちます。
鶏舎の隣に狩野川が臨めるスペースがあり、そこはバーベキューなどを楽しむことができるのだそう。堀江さんによると、料理人などプロの方たちだけでなく、今後は一般のお客様にも天城軍鶏の魅力や調理方法などを直接コミュニケーションできる場として活用されていくそうです。
【紅姫あまご】 下山養魚場 下山 明さん
伊豆天城山系の柿木川近く、湧水がこんこんと流れ出る場に下山養魚場はあります。もともとワサビ農家であった下山さんがワサビのための湧水を使って、あまごやニジマスの飼育を始めたのがこの養魚場の始まりだそうです。
ワサビ田とクレソン畑は養魚場の隣にあり、青々と育ったクレソンを味見させてもらうと、柔らかい葉はピリッとした辛みがあるのに、えぐみがなく、クレソンの旨みがしっかり伝わってきます。この土地ときれいな水のなせる業のようです。
情熱で育てた規格外の大きさ その味で多くの料理人を魅了
あまごは、体に朱点があるのが特徴で淡水の清流で育ちます。下山さんが育てるのは、姫あまご。通常の養殖の倍以上にあたる2年をかけて、じっくり育てます。これを3年以上かけて刺身で食べられるまで育てたのが「紅姫あまご」です。
その名のとおり、ピンクがかった身が特長で甘みがあり、クセや臭みがありません。実際に紅姫あまごを見せてもらうと、50センチ以上の大きな身があり、カゴから跳びだすほどの勢い。この味と大きさで、“あまごといえば、塩焼き”というイメージを変え、イタリアンやフレンチの食材にも用いられるようになりました。3年ものまで育つのはわずか2割程度。かける時間や手間を考えると、決して採算がよいとは言えません。理想とするあまごを育てたいという、下山さんの情熱とこだわりがあったからこそ、紅姫あまごは誕生しました。
【ふじやまプロシュート】 渡辺ハム工房 渡辺義基さん
富士山麓、御殿場にある渡辺ハム工房。店内は、さまざまなハム、ウィンナーなど加工品や惣菜が並びます。ここで注目したいのが、ふじやまプロシュート。真紅の身が美しいプロシュートで、口に含むと塩気とともに肉の旨み、熟成の風味が口に広がります。渡辺義基さんが試行錯誤で作りだした、メードイン御殿場のプロシュートです。
試行錯誤で風味と味わい豊かな、メードイン御殿場を実現
プロシュートは、イタリアで豚もも肉のハムのことで、渡辺さんのプロシュートは、非加熱の生ハム。原料には静岡型銘柄豚「すそのポーク」を使います。仕込みで塩漬けした豚肉を1年半かけて乾燥と熟成を同時に進めます。高温多湿な日本の気候では、生ハムはできないのでは、と思われる方も多いのではないでしょうか。渡辺さんによると、富士山から乾燥した冷たい風が吹き下ろす、ここ御殿場の冷涼な気候がプロシュートの製造の秘訣のようです。
店舗にほど近い場所にある熟成庫には、立派な豚もも肉がずらり。ほの涼しい庫内には、ふんわりと熟成された肉の香りが漂います。お邪魔したときは、豚もも肉が脂で覆われ、表面にカビが薄っすらと覆う状態で熟成されていました。「熟成の間に発生したカビは完成までに、すべて取り除かれ、洗浄され、安全です」とのこと。豚もも肉の骨の部分に近寄ると、熟成の良い香りがより強く感じられました。
店舗に出すとすぐに売り切れてしまう人気商品ですが、渡辺さんはさらに良い商品をと探究の日々。日本のプロシュートの今後が大変楽しみです。
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update : 2016.09.19 |category : INFO